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日本のマイナス金利政策は失敗か?
2016年04月20日
イェスパー・コール , ウィズダムツリー・ジャパン CEO


文字通りに受けとめれば、日本が史上初めて導入したマイナス金利政策に対する批判はなるほどと思われる。

 

為替面ではマイナス金利の効果は出ておらず、円は下落するどころか上昇している。1 だが、ここでは黒田日銀総裁のすべては順調に進んでいるというコメントを支持したい。

 

● マイナス金利導入以降、日本の機関投資家はかつてない規模のポートフォリオ変更を実施:3月だけで外国証券の購入額は過去最高の5兆円強に達している。2 確かに、国内金融市場から資金は「逃げて」いるが、これこそマイナス金利政策の狙いである。短期的な市場の動揺はともかく、長期的にみればマイナス金利は日本の資産市場やインフレ動向にとって良好な円安環境を支援すると思われる。

 

● マイナス金利は銀行の旧態依然としたビジネス慣行を改善するために導入された。量的緩和(QE)と国債買い入れは高価格で銀行保有資産を買い取るいわゆる「アメ」である。一方、マイナス金利は銀行の遊休資金に課税する「ムチ」の側面を持つ。銀行側の猛反発は想像に難くないが変化の流れも出てきている。マイナス金利の導入以降、地銀の間では経営統合が2件、7行の資本提携、8行による共同資産運用会社の設立が発表された。いずれも数カ月前には予想すらできなかった動きである。

 

こうした流れは銀行、特に地方銀行に負担を負わせるためのマイナス金利導入の意図を如実に反映している。財務省と金融庁は中小銀行の統合を目指しており、黒田日銀総裁はこれに向け思い切った舵を取ったと言えよう。

 

●また日銀、財務省、金融庁は銀行に預金業務から証券投資へのシフトを促しており、マイナス金利はこれを後押ししている。事実、邦銀は国内での効率的な資産運用と海外での貸出業務の構築という戦略計画を急ピッチで進める必要がある。マイナス金利は、量的緩和を導入してから日銀が目指しているポートフォリオのリバランスを今後も促進するとみられ、上述した共同出資の資産運用会社はその一例である。

 

●家計部門に目を向けると、マイナス金利によって支払利息が急減し購買力が大幅に向上するとみられる。マイナス金利導入後、住宅ローン金利は急激に低下しており、10年固定金利は導入6カ月前の約1.3%に対して0.7%となっている。また、住宅ローンの借り換えは昨年に比べて4倍に増加している3。住宅ローンの10%が借り換えに向かえば、支払利息の減少によって可処分所得は0.5ポイント程度上昇する計算になる。このように、マイナス金利は利益を銀行から消費者にシフトする役割を果たすと言えよう。

 

●最後に、金融市場が機能停止となり、リーマンショック時のような危機が起こるという不安を煽るような報道は注目を集めはしても経済学的には意味がない。日本の金融市場が事実上、政府の管理下にある状況は民間企業の信用リスクを引き下げこそすれ上昇させているわけではない。グローバル投資家が日本の債券へのエクスポージャーを高めていることがその証左である。

 

銀行がこうした見方に異論を唱えるのは当然だと思うが、チーム安倍と黒田日銀総裁には取り組むべき課題があり、そのためには旧態依然とした慣行を打破することにためらいはないと考える。

 

為替は? 日本からの記録的な資金流出はまさしくマイナス金利政策の意図したことである。今やポジションは完全にヘッジされている。グローバル・ポートフォリオのヘッジレシオは20159月末のわずか50%程度から今年3月には100%近くに上昇した。4 従って、米国のイールドカーブがスティープ化し、米国債のリターンに信頼感が戻れば、為替は円安に転換すると予想している。

 

1出所: 「マイナス金利付き量的・質的金融緩和の導入」(日本銀行、2016129日)。2016129日~418日に円は対ドルで11%強上昇(ブルームバーグ)。

2 出所: 日本銀行(2016331日)。

3 出所: ブルームバーグ(2016331日)。

4 出所: 日本銀行(2016331日)。


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