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マーケットニュース
「2017年の米ドル安」の謎を解く
2018年06月01日
クリストファー・ガナッティ, ヘッド オブ リサーチ、ヨーロッパ


2017年、中央銀行間の金融政策の乖離をはじめ、マクロ経済面で大きな変化があったが、こうした動きを踏まえた上で、最大のサプライズの1つとなったのは、米ドルの下落である。大方の予想では、米連邦準備制度理事会(FRB)が利上げを行う一方で、他の主要中央銀行が量的緩和を継続した場合、米ドル高が加速すると見られていた。

 

ところが、実際には逆の現象が起こったのである。

 

ウィズダムツリーではいくつかのブログ記事を通して、2017年の米ドル相場の背景を解説し、一連の分析が2018年以降の見通しを理解する上で如何に有効かを示すつもりである1。 

 

2017年:米ドルは幅広い通貨に対して下落

 

2017 Broad-Based Dollar Depreciation

 

  • 2017年、幅広い通貨に対してドル安が進んだ。上図は、2017年におけるG10通貨に対する米ドルのパフォーマンスを示したものである。注目すべきは、1~2つの主要通貨のみならず、10通貨すべてに対して米ドル安が進んだということだ。
  • また、主要な指数の観点から米ドルのパフォーマンスも検討に値する。最も伝統的な指数の1つである米ドル指数(DXY)は、ユーロと円のウェイトが高い構成となっているが、2017年に9.9%下落した。一方、より幅広い通貨に分散された米ドル指数としては、ウィズダムツリーがブルームバーグと共同で2013年に開発したブルームバーグ・ドル・スポット指数が挙げられるが、2017年には8.5%下落した2
  • MSCIエマージング・マーケット・インデックスは、2017年、良好なパフォーマンスを収めた。新興国通貨が対米ドルで5.2%上昇し3(累積ベース)、米ドルベースの投資家のリターンを押し上げることとなった。

 

金融政策と為替相場の間に明確な関係は認められず

 

 2008年~2009年の金融危機後に顕著になった傾向として、FRB、欧州中央銀行(ECB)、日銀を中心とする中央銀行の政策対応が盛んに議論され、連日のように報じられている。ここ数年における主要中央銀行の動向をまとめると以下の通りになる4

 

  • 2015年11月末時点で、FRBの実効FF金利は0.08%であった。金融危機の発生後、利上げは一度も行われていなかったが、2015年末以降、25ベーシスポイント(bp)ずつの利上げが6回実施され、2018年5月4時点で実効FF金利は1.69%まで上昇している。
  • ECBの主要政策金利であるリファイナンス金利については、2015年11月末時点では0.05%であった。現在は0.00%で、この水準で数年据え置かれている。
  • 日銀の当座預金金利は2015年時点で0.10%だったが、現在では-0.10%となっている。この水準に引き下げられてから2年以上が経過した。

 

ここでのポイントは以下の通りである。FRBが数年を要する金融政策の正常化に着手したのに対し、日銀とECBは金融緩和を継続している。金融政策の方針は3中央銀行によって市場全体に伝えられ、その乖離に注目した多くの市場関係者が「米ドルの上昇は必然」との基本シナリオを想定していた。

 

市場における政策期待と実際に導入された政策

 

イールドカーブの傾斜と直物為替レートの推移(2016年12月31日~2018年5月1日)

 

Yield Curve Slopes and Spot Rates

 

上述の「ドル高シナリオ」において肝要な点は、金融政策の見通しについて、各中央銀行がどの程度情報発信や市場との対話を行ってきたのかである。政策金利の実質的な差は、金融政策の先行きに対する市場の期待を捉える上ではさほど有効ではなく、むしろ、市場参加者の事前の予想が実現したのかを検証するのに役立つ。

 

  • 図中の破線は、米国の銀行間取引金利1年物と1ヵ月物の差(つまりイールドカーブの傾斜)から、ユーロ圏/日本の銀行間取引金利1年物と1ヵ月物の差を引いた値の推移である。この図から、米ドルの下落は、ユーロ圏と日本の長短金利差が、米国の長短金利差よりも速いペースで拡大していることを示唆するものと言える。このイールドカーブの傾斜の動きは、各地域の短期金利の上昇を市場が織り込みつつあり、日銀とECBの利上げ期待は2017年の段階で銀行間金利に反映されていたと解釈することができる。

 

データからストーリーを読み解く

 

我々は、イールドカーブの傾斜の変化に関するデータの重要性を過大評価しているとは考えていない。というのも、イールドカーブの傾斜は米ドル相場を動的に捉える手掛かりであり、将来の変動に常に影響を与えるものであるからだ。

 

    1.  FRBは基本的に、FRB自身が過去に提示した方針や市場で予想されてきた政策を実行したが、これは将来の金利に対する市場の期待には影響を及ぼさなかった。その証左として、イールドカーブは米国と他の市場の金利差が縮小する方向に動いている。

    2. 2017年には特に、ユーロ圏の経済指標が堅調な内容だったことを受け、市場ではECBの先行きの利上げ観測が浮上し、日銀の利上げさえも意識された。こうした動向は、イールドカーブの傾斜ならびに為替相場の先行きに対する市場予想に影響を及ぼした。

    3. ところが、さらなる展開が見られた。2017年末に掛けて、米国とユーロ圏/日本のイールドカーブの傾斜に変化が生じ、ユーロ圏と日本で短期金利の上昇期待が相対的に弱まっていることが示唆された。とは言え、対ユーロや対円で米ドルが大幅に上昇することはなく、この時点では、他の要因が為替相場を動かしていたことが推察される。

 

転換点を注視

 

2018年に入り、ユーロ圏の経済指標は、2017年とは全く異なる様相を呈している。2017年の段階では、ECBが2018年9月末に出口戦略を開始するとの観測が強まっていたが、足元でそのシナリオの確度はやや低下したと見られ、ユーロは昨年後半の上昇分を失った。

 

投資資金の動向に注目すると、2017年、欧州株のエクスポージャーの大半は、ユーロの変動の影響をフルに受ける為替ヘッジなし戦略に流入している。このところユーロ・エクスポージャーを正当化する論調が目立っていたが、ウィズダムツリーではこうした見方に疑問を投げかけ、ユーロ高を見込む投資家に対しても、全世界的な通貨エクスポージャーを取る通貨戦略の採用を提案してきた。また本稿で提示したデータも、目先のユーロ・ロングに対する疑問を深める内容と言える。

 

2018年5月25日 記

  

 

1We’d like to thank Record Currency Management, a global thought leader on currencies, for analytical support in this blog series. 
2Source: Bloomberg, with data for the period 12/31/16–12/31/17.

3Source: Bloomberg, with data for the period 12/31/16–12/31/17. 
4Source: Bloomberg, with data measured for the period 11/30/15–5/4/18.

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