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「チーム・トランプ」はアジアを軸に展開:問われる大統領のリーダーシップ
2017年04月10日
イェスパー・コール , ウィズダムツリー・ジャパン CEO


「チーム・トランプ」は先週、中国の習近平国家主席との首脳会談で世界経済のリーダーとしてのスキルを見事に披露した。最も重要なのは、両首脳が具体的な対話事項とそれに対する前向きな姿勢について合意した点である。実務レベルでは、米国の対中貿易赤字の是正に向け100日計画の進捗を両首脳が直接に見守ることで合意を得た。トップレベルでは、トランプ大統領は習近平国家主席の招きに応じて年内に中国を訪問して対話を続けることを受け入れた。

 

すなわち、会談の前に広く予想されていたように単に「見解の相違」を確認するのではなく両首脳は協調の道を探り、信頼に値する解決方法を見出そうとしたのである。新たな米中関係は現実的、かつ将来を見据えたスタートを切った。これは日本株を中心に世界のリスク資産にとって追い風になると思われる。アジアが貿易・通貨戦争に巻き込まれるリスクはここに来てかなり低下したと考えている。

 

ただし、先週のブログ 「チーム・トランプ」はアジアを軸に展開:米-中-日の力学が焦点に、で指摘したように、今回の米中首脳会談は、世界で最も活力に富むアジア太平洋地域に対する将来の可能性と見通しについて、投資家の信頼を形成するであろう今後の一連のイベントの第一歩にすぎない。次なるステップとなるのは、4月14日に米財務省が発表する予定の為替報告書である。その後4月17日の週には、ペンス副大統領とロス商務長官が来日し、日米間の経済・貿易・金融の枠組みに関する第1回目の対話を実施する運びである。 

 

真の「リスクオン」の流れを取り戻すには米国の財務省、商務省、ホワイトハウスが連携・協調したアプローチを明確に示すことが必要である。たとえば、両国の協調強化のために今回同意した「100日計画」を無視して、中国を為替操作国と名指しするのは賢明ではないだろう。円相場と日米二国間協議にとっても同様である。米国がこれまで以上にプロフェッショナルで協調的な貿易・投資方針を打ち出せば、「あれこれと騒ぎ立てる輩」にリスクテイカーが煩わされることも少なくなるだろう。ワシントンと東京は将来の二国間経済・貿易・投資関係の青写真の構築に努力している。4月6日~4月21日の「チーム・トランプ」のアジアを軸に据えた動きは、トランプ政権の能力を試す最初の試金石になると筆者は考えている。

 

米-中-日の三国関係からアジア太平洋地域への発展に

 

東京は米中首脳会談が成功裡に終わったことに安堵している。米中二国間の枠組みは両国のトップリーダーによりじきじきに監視される一方、日米二国間対話にあたったのは両国のナンバーツーである麻生副総理とペンス副大統領であった、という事実についての象徴的な意義についての理解は、確かにある。その根底にあるのは、安倍首相とトランプ大統領の間に、すでに個人的な信頼感のみならず両国の相互依存という深い関係が築き上げられているからとみられているだけでなく、盤石の日米安保体制によって、両国の経済・貿易関係はファンダメンタルというよりもテクニカルな課題としてとらえられている。これに対して、米中の安全保障体制は極めて不安定で、協力し合うというより競い合う側面が強いと思われる。「チーム安倍」は複雑な米中関係を最大限の努力を払って注視する必要性を十分に認識している。論争の的であると同時にさらなる政治資本を費やすコミットメントが求められる可能性があるからだ。

 

ここで、米中の良好な貿易関係がアジア太平洋全域の今後の繁栄に決定的な意味を持つ点を強調しておきたい。中国と他のアジア諸国との競争は激化している。具体的に言うと、対米輸出で直接競合している分野では中国以外のアジア諸国が中国製品に対して80%近くまで迫っている(下表を参照)。日本製品が中国製品と競合する比率は約65%に留まっているが、これは自動車および自動車部品では中国と直接競合していないためである。間違いなく、中国の輸出大国としての「独占状態」は揺らいでいる。

 

 

こうした状況から2つの考えが浮き上がってくる。第一に、米中間の自由貿易が崩壊すればほぼ確実に通貨戦争が起こり、中国は人民元切り下げによって予想される関税引き上げに対処せざるを得ないであろう。さもなければ、アジアのサプライヤーがすぐにも参入して来て、市場シェアは低下すると思われる。

 

第二に、米国は強気な姿勢で対中貿易赤字の是正に向け100日計画の交渉に乗り出した。米国にすれば輸入品はなにも中国製品だけに頼る必要はない。中国にとっては、輸出減少が失業率の上昇を招くのはほぼ避けられないことであり、ひいては共産党の指導力に対する信頼感が揺らぎ、特に地方政府と中央政府の間で軋轢が起こる恐れがある。

 

習近平国家主席が自ら「100日計画」の進捗状況を注視するということは、中国にとってこの計画の失敗は許されないという事実を如実に示していると思われる。

 

アジアの政策に対する不透明感がなくなれば「リスクオン」の流れが戻ってくると我々は考えている。アジアの動向が欧州をはじめとする他地域に何らかの影響を及ぼすかは見守る必要があるだろう。日米関係およびここに来て注目を集めている米中関係とは異なり、欧州との信頼できる対話はドイツ、フランスのどちらかがユーロ圏で主導権を握るか分かるまでは予断を許さないと考える。


この記事に関連する重要なリスク 海外投資には、通貨変動、政治あるいは経済情勢の不確実性に因る損失リスクなどの特殊なリスク要因があります。通貨に対する投資には、信用リスクおよび金利変動などのさらなる特殊要因もあります。


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