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トランプのアメリカと安倍の日本 – 日本側からの具体的な提案
2017年02月03日
イェスパー・コール, ウィズダムツリー・ジャパン CEO


安倍首相は、トランプ大統領が標榜する「米国第一主義」の達成に向けた計画・推進と日米同盟の強化を目指す具体的な政策を他国に先駆けて提案することに意欲的である。首相は昨年11月17日に、当時は就任前の次期大統領であったトランプ氏と初会談に次いで、2月10~11日には二度目の日米首脳会談に臨む。首相には両国が単なる話し合いから行動に移るために、具体的な「取引」を提案し大統領への印象を強める固い意志があるようだ。もし、我々が予想するように、今回の会談が成功裡に終われば、日米の経済・金融関係にとってポジティブな要因となろう。

 

「トランプのアメリカ、安倍の日本」は願ってもない「夢の取り合わせ」と考えられる。両首脳が基本的に「強力なリーダーシップ」と「自国第一主義」を理念として掲げているだけでなく、経済・金融分野の課題が非常に似通っているからである。チーム安倍は「日本の資金」を使って「米国のインフラ整備」を推進することでトランプ政権支持の意向を固めている。一方で、首相は日米の二国間貿易と投資関係が新たな世界貿易・投資分野の青写真になることを提案すると思われる。これは間違いなく将来を見据えた大胆な計略であり、トランプが牽引する世界経済および金融分野が今後どのように展開していくか、市場が把握する一助となろう。

 

取引の内容

日本で最大発行部数を誇る読売新聞の2月3日付け記事によれば、安倍首相は包括的な「日米経済協力計画」の提案を検討している。具体的な内容は、向こう10年間で鉄道などのインフラ整備を通して米国に4,500億ドル規模の市場と70万人の雇用を創出するというものである。これらの米インフラ整備事業に、公的年金や公的機関の資金を低金利で提供する可能性がある。また、電子商取引、知的財産、政府調達、労働・金融などあらゆる分野で新たな国際貿易ルールの設立を目指した両国の協力がこの計画に盛り込まれている。ようするに、トランプ大統領によるTPP(環太平洋経済連携協定)離脱決定を受け、米国が世界経済の発展を主導するためには日米二国間貿易の枠組みが新たな将来的モデルとして不可欠であると首相は言いたいのであろう。

 

安倍首相はトランプ大統領に対して、次の5つの共通目標を提案すると報じられている。

  1. 米国内における世界最先端のインフラ開発
  2. 米国内のインフラ開発を世界のインフラ需要に対応するための共同作業のプラットフォームとして推進
  3. ロボットやAI(人工知能)およびその応用技術の開発推進
  4. 宇宙開発など新分野における協業
  5. 防衛・安全保障システムの開発とセキュリティ戦略における政策連携

読売新聞の報道によれば、現段階では2)~5)は戦略的計画にとどまっているが、1)の米インフラ事業への協力については次のような具体的な提案がまとまっているようだ。

  • テキサス州、カリフォルニア州、およびワシントンD.C.-ボストン間を結ぶ東海岸北東部路線(North-Eastern corridor)など高速鉄道プロジェクトの整備
  • 現在米国内で使用されている、鉄道・地下鉄車両3,000両分の刷新
  • 高効率ガス火力発電事業の増設
  • 原子力発電所の増設
  • 老朽化した原子力発電所の廃炉に向けたロボットの共同開発
  • パイプライン、パワーラインといったインフラの検査・維持用ロボットの共同開発
  • 自動運転トラック、船舶、航空機のグローバル基準の共同開発

トランプ大統領の反応は?

現段階では安倍首相のチーム・トランプに対する提案のより具体的な内容を把握する必要があるが、今回の具体的な提案はトランプ政権にとって新たな幕開けとなろう。大統領はどのように反応するであろうか? 政権内の誰が前向きな対話に従事し、これを進めるのであろうか?

 

筆者の個人的見解では、諸外国の首脳より先にリスクを取って、アメリカの新リーダーの路線に積極的かつ建設的に関与し、新大統領の支持する「米国第一主義」を評価する道を選択する安倍首相は大いに称賛されるべきであろう。当然ながら、いち早くトランプ支持を打ち出した日本のトップレベルの関与は、ワシントンの新リーダー支持に尻込みしている海外諸国の首脳とは対照的である。

 

東京から見ると、日米最終的に双方にとって有益なダイナミクスの展開を達成する可能性は高いと思われる。さらに、トランプ政権との連携強化に努めるチーム安倍の勢いと熱意には並々ならぬものがある。筆者の長年の経験の中でも、日本の政策担当者がこれほどの前向きな姿勢を示した例は極めて稀である。

 

一方、「米国第一主義」を全面的に支持する日本の姿勢は中国に対する強硬政策を推し進める恐れがある。その場合、トランプ大統領が方針を転換して中国との関係を深めるというのが考えうる最悪のシナリオだが、その可能性は極めて低いと思われる。この点に関しては、日米安保体制が両国の友好的な経済関係の揺るぎない基盤となっている。

 

投資関連

安倍首相の提案のなかで最も緊急かつ具体的な項目は、インフラ事業と自動化プロジェクトへの投資である。したがって、最も直接的に恩恵を受けるのは日本の資本財セクターであろう。されに、トランプ-安倍の関係がより発展し親密になればなるほど、両国の通商に不安定な摩擦が生じるリスクは低減して行くと思われる。具体的には、日米の経済協力がさらに強化されれば、日本が為替操作を行っているとの批判は影をひそめるだろう。

 

2016年11月14日の安倍‐トランプ初会談前日の当社ブログ “安倍とトランプは最高の組み合わせか?”を参照されたい。


この記事に関連する重要なリスク

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