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前回とは異なる現在の円安局面
2016年12月15日
イェスパー・コール , ウィズダムツリー・ジャパン CEO


不透明感の高まりに対する懸念が広がるなか、依然として強く安定したいくつかの関係性が見られることは心強い。たとえば、日本株と為替相場との相関性は極めて高く、円高は株価パフォーマンスにマイナス、円安は株価上昇に作用する。ここ数週間、この相関関係は今までになく強まっているようである。円安進行を背景に、日本株のパフォーマンスは世界的に見て群を抜いている。従って、ドルベースの投資家は今回の円安サイクルでも日本株上昇の恩恵を捉えるために、これまでと同じく常に為替ヘッジを続ける必要があろう。

 

より重要なのは、今回のサイクルが長期的に続くと見られる点である。名目賃金・所得の伸びは2015年に鈍化したが現在は対照的に上昇基調にあり、円安に対して政界が反発するリスクは大幅に低減している。個人的見解だが、ここ10年間で見られなかった130~140円/ドルまで円は下落する可能性があり、そうなれば日本の株価は今後少なくとも20~30%上昇すると予想している。

 

「従来通り」ではない - 円安によりコンセンサス予想を上回るポジティブな収益サイクルが実現

 

アナリストにとって、これまでと同じく株価と為替の逆相関性は自明の理である。上場企業の収益の3分の2近くは輸出あるいは海外生産が生み出しているため、当然のことながら円相場は収益サイクルにとって最大の変動要因である。どの程度か?当社の試算では、円相場が10円下落するごとに、企業収益は10%程度押し上げられることを示している。

 

現在、投資家にとって企業収益と為替のこの強固な関係はひとつの大きな予測をもたらす。すなわち、日本は予想をはるかに上回る企業収益の上昇サイクルの構えにあるということである。なぜか?アナリストも企業のCFO(最高財務責任者)も本2016年会計年度(2017年3月末〆)の予想収益の想定為替レートを103~105円/ドルに据え置いているからであり、これは、現状では非常に控えめな水準に見えるからだ。

 

具体的には、今後の円相場が平均115円/ドルで推移すれば、収益の伸びは現在のコンセンサス予想である9~10%に対し、20%にも達する可能性がある。加えて、日本株のバリュエーションは依然として魅力的な水準にあり、TOPIXはコンセンサス予想収益の15.6倍と過去10年間の平均約18倍に比べて大幅に割安となっている。20%の増益となれば、TOPIXは約13.5倍と過去のレンジの下限に非常に近くなる。

 

ようするに、最近の株価上昇の後でも、魅力的なバリュエーションと企業収益の見通し改善は日本株にとって力強い追い風となるだろう。向こう数カ月は、優良輸出企業のアウトパフォーマンスがより鮮明になってくると予想している。

 

そう、今回は今までとは違う

 

今回と昨年の円安サイクルには2つの本質的な違いがある。賃金の伸びと日銀の金利目標設定という2点である。

 

第一点は国内要因である。現在、名目賃金の伸びは加速している。対照的に、いわゆる「黒田バズーカ」が発動された2014年10月の直後から賃金上昇率は鈍化し、110円/ドルを超える円安となり、円安基調が始まったのが前回である。2015年初頭に名目給与は約10年ぶりに 2%と高い伸びを示したが、第3四半期までにわずか1.2%に減速した。2015年のこうした名目賃金の伸び率低下は、円安に対する政策議論と国民の生活態度に多大なる悪影響を及ぼした。円安は確かに企業収益にはプラスだが、一方で輸入品の値上がりを招き、ひいては国民の実質購買力の低下をもたらす。円安の影響で食料品価格がすぐに上昇するため、低所得者層は特に大きな打撃を受けることになる。

 

2015年末までに、輸入コスト・プッシュ・インフレが上昇し、企業が円安による為替差益を賃金に反映させなかったため、円安の是非を問う政治議論が2015年の日本では沸騰した。安倍首相が企業に賃上げを説得できなかったことを受け、円安は「持つ者と持たざる者」との間の貧富の格差を増大させ、ひいては首相の支持率低下を招く恐れがあるとの危惧がチーム安倍の間で広がった。 たしかに、安倍政権は2015年末の参院選に備えていたため、円安は望ましくない状況だったと思われる。

 

さてそれから1年が過ぎ、状況は好転した。労働市場の逼迫を受けて賃金・所得は上昇に転じ、名目給与の伸びは2016年第3四半期までに2.5%へと再び加速して、前回のピークを上回っただけでなくここ10年で最も高い水準にある。また、人手不足が深刻化するなか、求人が増加していることをあらゆる指標が示している。

 

たしかに、名目賃金と所得の伸び率拡大は強力なバッファーとなっており、1年前に比べて、円安進行に対する政治論争は影を潜めているようだ。また、2017年から雇用促進税制(雇用者を増やした企業に対する減税)を実施するなど、チーム安倍は保護的政策を打ち出している。

 

図表 :  名目賃金の伸び率が再び加速し、円安に関する政治論争は緩和

 

 

出所:内閣府

 

日銀は今、「積極的に攻撃的に」ではなく「受動攻撃的に」通貨を巧みに操作している

 

2つ目の要因は、円安進行の根底にある要因が前回とは異なる点である。前回の円安局面のきっかけは2014年10月末に発動されたいわゆる「黒田バズーカ」で、日銀は資産買い入れ額と量的緩和の規模を倍増した。また、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は資産配分を国債から外国証券および国内株式に大幅にシフトするという大胆な目標を発表した。ようするに、前回の円安局面の背景には円の下落を狙う政策当局の積極的な動きがあり、それゆえに日本は「為替操作」をしているとの米国の非難にさらされるリスクが絶えなかった。

 

これとは対照的に、現在の為替動向は明らかに日米金利差が原因で加速していると言えよう。FRBが利上げに動く一方、日銀はゼロ金利政策を維持する方針である。国内金利目標の設定というオーソドックスな政策により、日銀は「受動的な攻撃姿勢」に転じた。すなわち、FRBが強いドルを目指す環境のなかで、円高ではなく円安が進行しているのである。そのため、日本の金融当局が米国の反発を招き、「為替操作」をしていると名指しされるリスクは大幅に低減している。

 

つまるところ、円安はさらに続き、日本株のさらなるアウトパフォーマンスにとって大きなプラス材料である。筆者の個人的見解ではあるが、2017年の米国の利上げサイクルが予想を上回れば、130-140円/ドルまでドル高が進む可能性も視野に入ってくる、と考える。日本の政治および政策の方向性は明らかに円安に対する許容度の拡大を示唆している。

 

円安を受容すると同時にこれを望む姿勢もある、と筆者は見ている。現日銀総裁は、2018年序盤の次期総裁指名争いが過熱する前に(現総裁の5年間の任期は2018年3月で終了)、2%の物価目標を達成する圧力にさらされている。再任で2期目を務める可能性もある。黒田総裁が再任されるか否かを決定するのはただ一人、安倍首相である。安倍首相の基本理念は明快で、目標を達成した者には報いるというものである。目標達成のプレッシャーはかかっており、、120-125円/ドル以上の円安が進まなければ、計算上でも経済状況から見ても2%の物価目標に近づくのは極めて難しいと考える。

 

 


この記事に関連する重要なリスク

海外投資には、通貨変動、政治あるいは経済情勢の不確実性に因る損失リスクなどの特殊なリスク要因があります。通貨に対する投資には、信用リスクおよび金利変動などのさらなる特殊要因もあります。



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