メールアドレス登録

ウィズダムツリーサイトに登録をすると、登録者限定のサイト内の記事にアクセスできるほか、リサーチレポートやブログの更新時に、アラートをメールで受信することができるようになります。

(※)機関投資家、証券外務員、IFA、FP、銀行・証券会社・運用会社にお勤めの方は「フィナンシャル・プロフェッショナルをお選びください

プロファイル追加情報

下記送信ボタンをクリックすることで、ウィズダムツリー・ジャパンの個人 情報保護方針を確認し、同意したことを意味します。

日銀の政策発表 -- 包括的、ダイナミック、そして的を絞った内容へ
2016年09月08日
イェスパー・コール , ウィズダムツリー・ジャパン CEO


約2週間後に日銀の金融政策決定会合が開催される。本会合において、今回初めて金融政策の総括的な検証が発表されるとあって、広く期待が寄せられており、検証の意味するところや影響について様々な観測が飛び交っている。関心の的は、日銀の体制変化が起こるシグナルなのか、黒田総裁は白旗を掲げるのか、日銀は引締めと追加緩和のどちらに動くのか、といった点である。

 

9月8日、日銀の中曽副総裁は「金融緩和政策の総括的な検証に向けて」と銘打った講演を行い、当社は講演とそれに続くプライベート・セッションに参加した。筆者は、以下の明瞭なメッセージを受けったと考えている。

  • 日本の金融政策は成功と判断されており、目標達成に向けた正しい政策ツールを提供している。そして、勿論、最重要目標は引続き、できるだけ早期に2%の物価安定目標を実現することである。
  • 切迫感は依然として強く、今後も財務政策と金融政策の融合が最重要課題となる。
  • 日銀はマイナス金利政策が金融システムに及ぼす悪影響を認識しており、筆者のみるところ、銀行など金融機関の収益性強化(イールドカーブのスティープ化)に向けてオープンな検討を始めている。
  • 今後、日銀の政策決定の要となるのは「サプライズの提供」ではなく、よりバランスのとれた「ダイナミックな判断」であろう。財政政策との協調もより明白になってくると思われる。

投資への意味合い – DXJFのパフォーマンスを押し上げる契機が近づいている – 日本の金融銘柄へのエクスポージャーを引き上げよ

 

日銀の政策をどう検証するか

金融政策の総括的な検証に向け、中曽副総裁は以下の2点に注目することを提案した:まず、彼の見解では、日銀は2%の物価安定目標は明らかに実現できてはいないが、デフレ脱却の面では成果を出している。デフレ脱却については、名目GDPの持続的な成長が裏付けとなっている。物価安定目標の未達はインフレデータから明らかである。その原因としては、エネルギーおよびコモディティ価格の下落によりCPIバスケットが低下サイクルに転じるという「不運」が挙げられる。

 

CPIの計算方式の詳細をとやかく言うことではなく、 重要なことは中長期的な「インフレ期待」も2014年から2015年初頭にかけて10年振りにやや上昇した後、再び低下した点である。ここで注目すべきはインフレ期待の「錨が上げ」られ、現在は「過渡期」にあることである。長期的な転換局面が始まって、循環的低下局面に入ったからといって、政策が失敗に終わったわけではない。

 

中曽副総裁が主張したのは、日銀がこれまでどおりの政策を継続する必要性であり、2%の物価安定目標の早期実現に向けてあらゆる手段をとるというものである。端的に言えば、物価引き下げや量的緩和の縮小は行わず、従来の枠組みとツールを堅持することである。

 

「適合的なインフレ期待」からの脱却が必須

どうして日本ではインフレ期待が厄介な問題であるのだろうか。「順応型の」期待の方が「未来を見据える」期待よりも支配的だからである。「デフレ均衡」にがんじがらめとなった世代は、抜け出すことの出来ない習慣と期待を作り上げており、疑わしい時には、物価は下落すると予想するのである。

 

また、ほぼ機械的に基本給が設定される日本の状況では、その時点のCPIが「春闘」の指標となる。 従って、CPIの循環的下落は直ちに名目賃金の上昇率低下となって現れる。それはともかく、問題なのは、抜け出すことのできない順応型インフレ期待が政策担当者にとってハードルを大幅に高くしており、徐々に戻していくような政策ツールやターゲットは選択肢にならず、必要とあれば政策をさらに推し進めるしか選択肢がない点である。

 

マイナス金利政策:4勝2敗

具体的な政策ツールとして、中曽副総裁は、批判の多いマイナス金利政策を検証するための極めて実際的な枠組みを提唱した。それによると同政策は4勝2敗、4つのプラス面(効果)と2つのマイナス面(影響)がある。今後は、「ダイナミックな判断」を用いてプラスとマイナスを認めつつ、いかなる選択肢も排除しないことが必要となってくる。

 

具他的に、NIRPがもたらしたものは:

 

白星:

  1. 絶対金利の低下とイールドカーブの平坦化。名目金利および実質金利の低下は循環的および潜在的成長の押し上げを狙った金融政策効果の重要な波及経路である。
  2. 住宅ローン、融資、社債の実効金利も低下している。従って、金利低下は国債にとってポジティブなだけでなく、民間セクターにも好影響を及ぼしている。
  3. マイナス金利の導入以降、社債発行額の増加に加え住宅ローンの借り換え、中小企業の新規借り入れも急増している。すなわち、低金利は実際に再リレバレッジを押し上げている。
  4. 様々な調査が貸し手の姿勢が改善していることを示している。従って、イールドカーブの平坦化やスプレッドのタイト化に対する不満はあるものの、金融機関の貸出態度は積極的になっている。

黒星:

  1. イールドカーブの平坦化と絶対金利の低下は確かに銀行の収益性を圧迫しており、 貸出増加の効果はこれを相殺するには不十分である。銀行の収益性は全般的に悪化しており、マイナス金利は国内銀行業界の過剰な競争をさらに煽っている可能性がある。
  2. マイナス金利導入により、保険会社や年金基金は無リスク金利と割引率の絶対水準の低さにより影響を受けている。さらに、年金基金の懸念や消費者マインドの悪化といったリスクも認識する必要がある。

ダイナミックな判断とは、政策の予測可能性と一貫性の向上である

重要なのは、日銀が公にマイナス金利政策の両側面、肯定的な面と否定的な面を認めた点である。マイナス金利の導入と「総括的な検証」の前は、金利低下とイールドカーブの平坦化は多分に日銀の意向を反映した結果だった。国債利回りの低下は、ポートフォリオのリバランス、すなわち債券からリスク資産、株式、外貨への資金の移動を促すためにはが望ましかったからである。ここに来て、マイナス効果を認めたことが議論の一部となっている。

 

だからといって、ポートフォリオのリバランスがもはや求められていないわけではない。むしろリバランスは非常に望ましいとみられ、「総括的な検証」の最終発表ではリバランスが政策的枠組みにおいて果たす役割に焦点が当てられるだろう。しかし、想定無リスク金利はすでに下限に達していると筆者は考えている。

 

また、日銀は日銀法に定められた使命、すなわち金融システムの安定的維持のために政策を実施しなければならないことを十分に自覚している。高まりつつある銀行の不満を無視することはできない。「総括的な検証」はこうした点に対処する内容となり、結果として今後の政策議論はよりバランスのとれたものとなろう。

 

以上の点に鑑み、筆者は日本の金融政策の安定性と予測可能性が向上すると考えている。これまでの「いつでもサプライズを提供する」姿勢から、焦点は「ダイナミックな判断」に移ってきている。これは切迫感の喪失を意味するものではなく、2%の物価安定目標の早急な実現が改めて明言されるだろう。

 

金融政策と財政政策の協調

では、インフレ目標はどうすれば達成できるのかと言うと、答えは金融政策と財政政策の協調の推進である。日本の政策決定の変化の全体像は、事実上の大胆な財政緩和である。安倍政権が発表した複数年に及ぶ28兆円(GDPの5%に相当)の経済対策は向こう数週間で詳細が明らかになるとみられる。今後12~15カ月で内需は正味0.75~1%程度押し上げられると予想される。

日銀の役割は明確で、借入需要の増加に応じた資金供給である。資金供給量は5~10兆円と推測されるため、日銀のバランスシートの増加目標は現在の80兆円から90兆円に拡大するとみている。

本当にイールドカーブのスティープ化が求められるのであれば、目標レンジは70~90兆円になるだろう。日銀が購入パターンを若干変化させれば、国債市場の流動性をある程度拡大できるとみられる。もうひとつの可能性は日銀による国債買い入れスケジュールのデュレーションを短縮することである。

 

金融機関に事実上の貸出支援を行う道もある。例えば、国債補完供給を拡大し、現在の勘定残高から国債を貸付け、金融機関はドル建て融資の担保としてこれを利用する。大半の銀行ではドル建て融資はスプレッド事業のなかで最も利幅が厚いため、収益性にとって大きな追い風となるだろう。ドルLIBORの現在の不安定な動きからみて、この政策オプションの魅力は増していると思われる。いずれにしても、金融機関にこれまでより広く担保金の利用を認めることも視野に入れている、と我々は見ている。

 

こうした状況に鑑み、マイナス金利は現行水準で維持されると予想する。

 

 


この記事に関連する重要なリスク

海外投資には、通貨変動、政治あるいは経済情勢の不確実性に因る損失リスクなどの特殊なリスク要因があります。通貨に対する投資には、信用リスクおよび金利変動などのさらなる特殊要因もあります。



前のブログ 次のブログ