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「安倍政権への羨望」から「ジャパン・プレミアム」へ
2016年07月11日
イェスパー・コール , ウィズダムツリー・ジャパン CEO


安倍首相は、日曜日に実施された参議院選挙で大勝利を収めた。与党連立政権は現在、衆参両院で「圧倒的多数」による支配権、すなわち3分の2以上の議席を事実上確保している。欧米先進諸国の多くが、政権の空白状態やリーダーシップ不在のサイクルに陥っているのとは対照的に、民主的に選ばれたグローバルリーダーのなかで「チーム安倍」が圧倒的な勝利者であることは、もはや疑うべくもない。現在、安倍政権への「羨望」が、世界中の政界のエリート達の間で広がっている。もし、私の予想通り、今後3~4ヶ月の間に「チーム安倍」が経済政策面で力強いリーダーシップを発揮することが出来れば、今後日本のリスク資産の市場で「ジャパン・プレミアム」が発生する可能性がある。個人的には、日本の景気刺激策はスケールが大きく、創造的で十分調整されたものになると見ている。金額的には、GDPのおよそ2%相当に達し、特定の世帯グループに直接現金を配布する「ドローンマネー」や、実質的な日銀からの直接資金調達が始まるだろう。


この歴史的にも例のない議会での権力を、安倍首相はどのように使うのか?

 

 コメンテーターの多くは、安倍首相が今後、自身の念願である憲法改正に焦点を当てることを懸念している。3分の2という圧倒的多数を獲得したのであるから、制度的には彼がその道を選ぶのは可能だ。安倍首相が、日本には太平洋戦争の後に米国人から与えられた憲法よりも、自国民によって起草された憲法こそが相応しいと深く信じているのも事実である。彼はこのことに対し極めてオープンであり、憲法改正が日本で議論の的になっていることに疑いの余地はない。

 

しかしながら、政治的資本が主に憲法改正に向けられるという見方は、安倍首相の根本的な哲学や日本に対するビジョンを大きく誤解していると私は見る。安倍首相の基本的な哲学とビジョンは、かつて明治のエリートたちが唱えた「富国強兵」、すなわち「豊かな国と強い軍隊」というスローガンをモデルにしたものである。それは「ゼロサムゲーム」ではなく、そこには高度な相互依存関係が存在する。つまり、力強い経済なしには、憲法改正は意味をなさないのだ。


グローバルな野望

 

 経済が今後も低迷した場合、憲法改正が自国及び海外において政治的に裏目に出る高いリスクを孕むことを安倍首相は理解している、と筆者は考える。安倍首相のゴールは、日本をアジアやグローバルリーダーから評価され尊敬される国にすることである。力強い経済なしに、このことを実現するのは不可能だ。米国であれ中国であれ、経済成長と繁栄を約束したにもかかわらず実行できなかったリーダーのことを尊敬などしないだろう。グローバル・パワーという観点からは、「アベノミクス」が失敗した場合、日本は世界の傍流へと再び滑り落ちてしまうのだ。

 

結局のところ、経済停滞の中での愛国主義は、外界への脅威にもチャンスにもならない。シンプルに、「アベノミクス」の成功なくして安倍首相が抱く国家的な野望を実現することは出来ないのだ。結局は、経済が弱体化すればするほど、グローバル資本や技術、あるいはグローバルな労働力への日本の依存が深まるだけなのである。

 

自国での信頼

 

 自国においても、「アベノミクス」の成功がなければ、国粋主義的な目標や偏った憲法改正への取り組みも無意味になる。安倍首相が国民や企業に「満足感を与える要素」を提供できなければ、遅かれ早かれ彼らは安倍首相にそっぽを向くだろう。日本は結局のところ、地方、地域、国という幾重にも重なる選挙を基盤に民主主義を機能させている。もし「アベノミクス」が失敗したら、強兵の色の濃い憲法改正への動きは、一党への権力集中を際立たせ、結果として野党抵抗勢力の統一と蜂起を触発するだろう。

 

つまるところ、先日の参議院選挙で「アベノミクス」に与えられた明確な信任は、力強い経済構築に向けた安倍首相のリーダーシップに対する期待の高さを示すものなのだ。彼はいまや、国民や企業などに約束した「満足感を与える要素」を提供せざるを得ない状況に追い込まれている。このプレッシャーは、安倍首相の任期が切れる2年後(2018年9月)まで続く。

 

安倍首相の計画:日銀と財務省の一体化

 

 今後は、経済政策の方向性がより単刀直入になる。何よりもまず、財政刺激策が拡大されるだろう。安倍首相は既に、追加的な刺激策のとりまとめを指示している。この件に関しては、焦点は単に規模ではなく、むしろ実際は金融刺激策の追加を伴う財政拡大政策であるという点にある。安倍首相の経済アドバイザーのほとんどが、金融政策単独で経済成長を刺激するのはますます困難になっていることを認めている。重要なことは、「チーム安倍」のリーダーシップが実際のところ日銀、そして財務省の目指すところと直接的につながっているということだ。具体的には、次の日銀の動きは、今後実施される補正予算を実質的にファイナンスするものになるだろう。

 

注目すべきことは、過去数年と違い、日本には更なる支出を賄うための余分な税収がないという点である。従って、日本にはいわゆる「財投債」を発行する財政投融資計画(FILP)を通して公的投資に資金を注入するオフバランスの選択肢があるものの、赤字財政が唯一の選択肢となる。財投債と赤字国債とのテクニカル的な違いは、財投債がプロジェクトベースで、税収を使って返済できないという点である。但し、債券市場においては、「財投債」は他の日本国債と同様に取引され、日銀は「財投債」を買うことが可能だ。補正予算が8~10兆円、あるいは、GDPの1.5%~2%になると仮定するなら、日銀は量的緩和によるバランスシートの増加目標を、現在の80兆円から88~90兆円に引き上げると予想される。

 

重要なのは規模

 

 では、補正予算のサイズはどうなるだろう?政府系のエコノミストは、現在のGDPの需給ギャップはおよそ5~6兆円、すなわちGDPの1~1.2%に上ると見積もっている。これが基準となるポイントだ。最近発生した熊本地震の復興に約4~5兆円が必要と官僚が見積もっているのは、おそらく偶然ではない。

 

これに加え、フィンテック、ロボティクス、ヘルスケア、研究開発などを対象とする安倍首相が推進する新たな「インダストリー4.0」イニシアチブは、1~3兆円に達する可能性がある。

 

「ドローンマネー」

 

 更に、アベノミクスは「ワーキング・プア」層や女性、年金不足者、そして若者などを含めた経済問題に取り組んでもいる。これらの層に対する直接的な現金配布は、現在政策論争の一部となっている。メディアはこれを「ヘリコプターマネー」と呼んでいるが、人口の特定ターゲットにピンポイントで届けることから、我々はこれを「ドローンマネー」と呼びたい。国庫からこれらのターゲットにどれくらいの資金を移行させるかのテクニカル面での詳細は、今後練り上げる必要があるが、我々は総額で約1.5~2兆円の資金が直接家計に投じられると見ている。

 

期待される内容と、その実施タイミング

 

 特定の世帯グループに直接現金を配布する「ドローンマネー」などを含む、「非正統的な」財政策をまとめあげる作業には、少なくとも4~6週間を要するだろう。安倍首相は、8月半ば頃に内閣改造を行うことも示唆している。目玉は、財務相と厚生労働相、および経済再生大臣だと我々は見ている。さらに、民間セクターのリーダーも参加する規制改革会議も改選期を迎える。我々の理解では、「チーム安倍」は「経済でリーダーシップを振るうチーム」という世間一般のイメージを再び盛り上げる必要性を非常に意識している、と我々は見ている。いずれにせよ、新たな大臣の顔ぶれが決まるまでは、特定の財政支出に対する確固たるコミットメントが与えられる可能性は低いだろう。

 

よって、追加的な財政及び金融刺激策の詳細は、安倍首相が国連年次総会で基調講演を行う直前の9月初旬に発表されるであろうと予想する。経済政策面での力強いリーダーシップを世界に示そうという「チーム安倍」の決意は固いと我々は見る。日本の景気刺激策は大規模で創造的、かつ、各方面のバランスの取れたものになるだろう。総額はGDPの2%に相当し、特定の世帯グループに直接現金を配布する「ドローンマネー」の使用や、実質的な日銀からの直接資金調達がその中に含まれると思われる。

 

これに加え、日本株は割安になっていることから、日本株への配分を引き上げるには申し分ない条件が揃っている、と我々は見ている。日本のパフォーマンスのなかでどこに注目すべきか、その更なる分析は、過去のブログこちらを参考にして頂きたい。

 

 


この記事に関連する重要なリスク

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