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新たな中間層の台頭:最近の流れ
2016年02月17日
イェスパー・コール , ウィズダムツリー・ジャパン CEO


「新たな中間層」の出現は、当社の日本経済に対する強気な見方を支えるひとつの重要な要因である。当社の主張はわかりやすい内容である。すなわち、労働市場の構造的なひっ迫により企業は非正規雇用よりも正規雇用を増やし、雇用の質を向上させる必要性に迫られていると考える。これにより給与収入が増え、銀行借入が容易になるとともに、消費者マインドも回復する。これは内需サイクルを創造するためのカギとなる経済ダイナミクスであろう。投資の観点から見れば、「新たな中間層の出現」は世界経済のサイクルと日本市場のデカップリングを生み出す重要な要因と考えられる。

16日、政府は2015年の労働力調査結果を公表した。それによると、2015年の正規従業員数は26万人増と8年振りに増加した。非正規従業員数も18万人増加したが、後者のトレンド伸び率は鈍化している(2014年は56万人、過去最高を記録した2013年は93万人)。いずれにしても、重要なのはここ10年ほどで初めて正規従業員数が純増した点である。

確かに、正規雇用が久しぶりに増加した背景には、2010~2014年の5年間で正規雇用が120万人減と大幅に落ち込んだ一方で、非正規雇用が240万人増加したという事実がある。雇用の質の大幅な悪化により内需拡大のモメンタムは失速した。非正規雇用者の年収が平均で正規雇用者(賞与と諸手当を含む)の約半分であることを考えると、2010~2014年の5年間で総家計所得は年間約0.5%減少したと推計される。

一方、2015年に正規従業員数が26万人増えたことにより、総家計所得は0.5%程度押し上げられたと考えられる。今回の労働力調査結果は新たな中間層の台頭を後押しするポジティブな転換点を示していると言えよう。

もうひとつ具体的な例をあげれば、「ウーマノミクス(女性の活躍推進)」が単なる政治的スローガン以上の意味を持つことが裏付けられた。2015年、新規の正規雇用者26万人のうち半数強を25~55歳の女性が占めた。また、女性労働者全体に占める正規雇用の比率は2014年の43.3%から43.7% に上昇した。これに対して、男性の正規雇用の割合は78.1%でほぼ横ばいだった。

雇用の質の向上と賃金上昇にもかかわらず、なぜ消費は拡大しないのか

目を引くのは、久々の新規正規雇用の改善を示す今回のデータが2015年10~12月期GDPデータと一致している点である。2015年10~12月期の給与データを見ると、労働所得全体は1.8%増と着実に伸びたことがわかる。実質ベースの給与は2014年に1.2%急落した後、2015年には1.1%増と大幅に回復した。GDPと労働統計を考え合わせると、雇用の質の着実な改善と給与全体の伸びの加速が明らかに見てとれる。

こうしたポジティブな要因にもかかわらず、GDPデータは2015年10~12月期の実質個人消費が1.1%下落したことを示している。賃金が伸びているのに3四半期連続で消費が減少しているのは、家計部門が消費よりも貯蓄を重視していることを示唆している。

賃金の上昇と消費減速のギャップが拡大しているのはなぜか。家計部門が支出を抑制している理由とは。


考えられる内的要因は以下の3点である。

  • 昨年10月/11月以来国会で盛んに論議され、メディアが大きく取り上げている2017年導入予定の消費税増税の行方が不透明である。
  • 医療費と年金に関する不安感。官僚と政治家は医療費の自己負担引き上げの必要性、ならびに高所得者層の年金引き下げの可能性についてオープンな議論を繰り広げている。
  • 「マイナンバー」の導入により所得や納税状況を把握されることになった、自営業者や起業家は、徴税に備え始めている。

無論、これ以外にも生活防衛策として貯蓄を増やす要因はある。アジア地域の安全保障に対する懸念、あるいは昨年秋の豪雨・大洪水を受けて自然災害に対する警戒感が増大している。昨年第4四半期の国会での議論は家計部門の貯蓄志向を転換させる方向に向かった。しかしこれまで述べた不透明な状況を踏まえ、家計部門が取った行動は貯蓄を増やすことだった。

2015年の労働統計とGDPデータを見ると、名目、実質ベースともに賃金が上昇していることに疑いの余地はない。消費が低迷しているのは、雇用改善の波及効果がないからではなく、政治的リーダーシップの欠如が原因である。先行きに対する不安感が貯蓄の増加を招いているのである。要するに、「チーム安倍」はなすべきことをはっきりとさせ、貯蓄増加に歯止めをかけ、年金と医療に関する、より明確で信頼できる改革案を提示する必要があるだろう。

本レポートでは、労働市場が低成長の原因ではないことを指摘したい。家計所得は増加しているが、将来の税制、年金および医療に関する一貫性に欠けるメッセージを受けて消費よりも貯蓄を選好している。「チーム安倍」は一刻も早く、医療および年金に関するより明確で信頼性のある改革に今一度注力すべきであろう。

図表 : 正規従業員数8年ぶりに増加
 
出所: 総務省


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