メールアドレス登録

ウィズダムツリーサイトに登録をすると、登録者限定のサイト内の記事にアクセスできるほか、リサーチレポートやブログの更新時に、アラートをメールで受信することができるようになります。

(※)機関投資家、証券外務員、IFA、FP、銀行・証券会社・運用会社にお勤めの方は「フィナンシャル・プロフェッショナルをお選びください

プロファイル追加情報

下記送信ボタンをクリックすることで、ウィズダムツリー・ジャパンの個人 情報保護方針を確認し、同意したことを意味します。

1月の金融政策決定会合 – フォースの覚醒
2016年01月25日
イェスパー・コール , ウィズダムツリー・ジャパン CEO


1月28/29日に日銀の金融政策決定会合が開催されるが、状況はかなり厳しい。国内外のデフレ圧力への対応に加え、日銀は積極的な成長戦略の信頼性を改めて示す必要性に迫られている。前回の会合では方針に対する反対意見が目立ち、決定の支持率は6対3に低下した。委員の一人は「補強策の導入は、QQE(量的・質的金融緩和)の限界に関する意識を高める可能性があり、市場との対話がさらに難しくなるとまで述べた(1)。

 

ミスは許されない – 1月の金融政策決定会合は資産デフレへの対応だけではなく日銀の役割そのものが試されることになろう。日銀はできる限りの金融政策を講じているのだろうか。あるいは、デフレを終焉させ、持続的な成長に必要な策を持っているのだろうか。

 

手短に言えば、黒田総裁はあらゆる手を打ち、できる限り早く物価安定目標2%を達成するという明確な約束を守ることに最善を尽くすと考えられる(2)。1月の会合では先を見越した成長戦略を示し、手段と目標を明らかにするだろう。上述した反対票を投じた一人の委員の発言に対し市場参加者と政治家は共鳴しており、新たな政策手段(マイナス金利)、名目GDP目標が提示される可能性もあるとみられる。

 

政策選択と市場への影響 

1月の会合で日銀が新たな方針を打ち出すことを期待しているのは当社だけではない。先週末の「日経ヴェリタス」は新たな「黒田バズーカ」の発動を予想している。つまり、市場はこの1月に何かが起こることを期待しているのである。日銀が動かなければ、即、弱気な市場モメンタムが増幅し、円高と日本株の下落が進むだろう。

我々が予想するように日銀が動いたとしても、市場の反応は変化の度合いによって異なるとみられる。以下の政策シナリオは完全な弱気(12月に質的緩和のテクニカルな変更のみにとどまり、量的緩和を拡大しなかったことに対する失望)から極端な強気(安倍首相が9月に明言した名目GDP600兆円)までを網羅している。

各シナリオに対する当社の見解は以下の通りである。

 

・「質的緩和」のみ

 これは2015年12月18日の決定の繰り返しである。マネタリベースが、年間約80兆円に相当するペースで増加するよう金融市場を維持するが、「量的」ではなく「質的」にある程度調整した。12年債から15年債への延長、あるいは財投債や地方債、REITや社債など買い入れ拡大を考えているとみられる。こうした政策は資産クラスによってはメリットがあろうが、戦術的および戦略的なマクロ投資にとってはマイナスであろう。バランスシートが実際に拡大しなければ、リスク資産への投資家は日銀のコミットメントに対して疑問を抱くとみられる。

 

・量的緩和 – 80兆から90兆円へ、または100兆円へ

成長戦略の信頼性を取り戻すためには「量的緩和」の拡大が不可欠と思われるが、それだけでは不十分である。市場は常に利益を追求し、損失が嵩むとその傾向は顕著になる。したがって、問題になるのは新たな刺激策の規模とバランスシートの拡大の度合いである。同様に重要なのは、どの資産が買われるかだ。国債、ETF、REITの買い入れは容易に想像がつく。上述した「質的」ツール(デュレーションとオプションの期限延期)が役に立つだろう。

 

考慮事項 – 株式売却の停止?

もうひとつの選択肢としては、金融機関から買い入れた株式の売却完了期限の延長がある。2002年11月にも日銀は同様の措置を取り、新規制に従って銀行の株式持ち合いの解消に努めた。現在、バランスシートは約1.3兆円、時価ではおよそ3兆円である。2015年12月に政策委員会は2016年4月からの株式売却を決めたが、売却完了期限を5年から10年に延長した。推定で年間約3,000億円規模の売却を進め、2016年4月に設定されるETFで穴埋めをする計画である。筆者は、日銀の株式保有に伴う「モラルハザード」は極めて現実的と考えている。日銀には「ゾンビ企業」の株式を好きな時に売却する手段がある。しかし、保有株式の売却期限を延長すれば、300兆円のバランスシートを押し上げるだけでなく、株式の供給過剰に対する市場の不安をある程度和らげると思われる。細かい点が重要なのだ。

 

サイズが重要 – 少なすぎ、時期も遅すぎ?

しかし、結局のところ重要なのはサイズである。市場は成長モメンタムに敏感であり、サイズが拡大しなければモメンタムは低下する。実際、日銀のバランスシートの拡大ペースは大幅に鈍化しており、2013年のアベノミクス発足時には42%だったが、2014年には34%に減速、2015年には28%となった。量的緩和が80兆円に据え置かれれば、2016年の伸び率は21%と予想され、アベノミクス発足時の成長モメンタムの半分に留まることになる。

 

2015年の成長モメンタム(28%)を維持するためには、量的緩和を80兆円から107兆円に引き上げる必要がある。100兆円以下では、市場は少なすぎてタイミングも遅いと弱気になるだろう。ちなみに、日経ヴェリタスは100兆円を挙げている。

 

新しい政策ツールと目標

より基本的な面では、資産買い入れ額を増やすだけでは問題解決には及ばないことが多い。確かにサイズは重要だが、量的緩和拡大の限界効率の効果が低下し、望ましくない悪影響が広がる例が見られる。たとえば、日銀が国債市場から個人投資家を締め出しているのは明らかであり、世界第2位の国債市場の価格形成機能は損なわれている。「リスクフリーレート」の長期国債が真に有効な市場レートとすれば、他の市場のボラティリティはいずれも通常より高いことになる。リスクフリーレートは資産価格モデルの要だからである。簡単に言えば、当初は大きな成功を収めた量的緩和策もポートフォリオの長期的な安定性とボラティリティの低下を促すには至っていない。では、今後はどうすればよいのであろうか。この難問は日本だけにとどまらず、前例のない金融緩和を実施しているすべての国々にあてはまることである。

 

マイナス金利

個人的な見解としては、日銀が直面している現在の苦境を乗り切るためには新たな政策手段、具体的にはマイナス金利の導入が不可欠と考える。ECBはすでにマイナス金利を導入している。結論を出すのは時期尚早だが、大きな悪影響は出ていないようで、民間銀行のリスク資産投資の機会コストを引き上げることで実体経済に恩恵を与えているとみられる。当然のことながら、日本の銀行は過剰準備高への課税に耐えうるだけの調達力と資本ベースを備えている。

 

まず、マイナス金利の導入により政策委員会は現在の量的緩和策(実際であれ単に認識されているものであれ)の制約から解放される。新たな金融刺激策の伝達経路が開かれ、成功の可能性が高まるだろう。当然ながら、マイナス金利の導入は上述した「標準的な」量的・質的緩和の拡大を排除するものではない。しかし、追加的量的・質的緩和が単独あるいは同時に発表されれば、マイナス金利は極めて大きいだろう。政策委員会は異次元の景気刺激策に乗り出すことになり、手を拱いているとの批判は免れると思われる。

 

「ワンチーム、ワンドリーム」– 名目GDP目標

新たな政策手段に加え、相当に強気なシナリオが新たな政策目標に掲げられるようだ。安倍首相の意志に沿い、日銀は名目GDPを現在の500兆円から600兆円に拡大することを明言しており、金融政策が経済政策を支えるうえで大きな役割を果たすとみられる。中央銀行が名目GDP目標の達成を約束した例はこれまでにないため、日銀の役割はかつてないほど重要になっているが、だからこそ多くの関係者はその実現性に疑問を抱いている。しかし、名目GDP目標はアベノミクスの成長戦略の信頼性を取り戻すうえで最も効果的であると筆者は考える。昨年9月に発表した「アベノミクス2.0(新三本の矢)」は名目GDP目標を600兆円としたが、その後のフォローアップはない。デフレショックの脅威が確実になる前に、今こそはっきりとした態度を示すべきであろう。

 

政策委員会にとって、CPI目標の複雑な技術的要因にはモノ・サービスの正確なバスケットについて絶え間ない議論が必要である。また、黒田総裁はインフレ期待を重視しており、経験則の複雑さを増幅させるだけでなく、金融市場との対話を難しくさせている。どのみち、プロの投資家は将来のインフレ率と成長率の最も効率的かつ最終的な判断手段(万全ではないにしても)は市場であると考えている。

 

確かに、日銀だけに名目GDP600兆円を達成することを求めるのは無理がある。金融、財政、規制面の政策を動員してデフレを終焉させる必要があるだろう。「三本の矢」のそれぞれが協調し、説明責任を示すことが重要である。様々な方法によって、名目GDP600兆円を達成するためには、 政策委員会は影響力を強め、社会政策を推進する必要がある。600兆円に向かい財政と規制面において「抑制と均衡」をはっきりとさせる必要がある。中央銀行の独立性を信奉する向きには受け入れ難いかだろうが、現状は日銀と財務省が前例のない関係にある。日銀はすでに年間新発債をこれまでの約2倍買い入れると宣言しており、はっきり言えば日本のガバナンスと説明責任を向上するうえで財政運営に関する日銀の関与が明らかになっているのである。

 

「ワンチーム、ワンドリーム」を実現するのは容易ではない。たとえば、構造改革は期待通りには進んでいない。結局のところ、成長を目指す構造改革のアジェンダは新たな起業家精神と民間セクターのリスクテイキング、民営化、規制緩和、非中央集権化、あるいは特別な経済圏で権限を享受する場合に限って成功を収めるのである。アベノミクス開始から3年間にわたり様々な論議がなされたものの、国内企業の投資モメンタムは低迷している。

 

日銀が名目GDP目標を達成しようとすれば、官僚や大臣は明確な構造改革を担う必要がある。言うのは簡単で実行は難しいが、これはまさにアベノミクスの約束事である。すなわち、すべての関係者が経済の課題に対して、協力し説明責任を負うということである。現時点では、日銀の政策委員会が名目GDPの拡大目標に動くのは時期尚早と言えよう。今年7月に行われる参院選が慎重さの背景にあるとみられる。しかし、最終的に「チーム安倍」には日本経済を牽引する力があると考える。

 

1月末の金融政策決定会合に注目

総合的に見ると、この1月に日銀の政策およびアベノミクスの成長戦略がクラッシュテストに直面していることは明らかである。日銀の標準的な対応はすでにある程度予想されているようだ。従って、当面、金融市場にポジティブな影響を与え、長期的に成長とインフレ期待を押し上げ、黒田総裁の成長路線に対する信頼感を確固たるものにするため、思い切った革新的な方針転換がなされるとみられる。量的緩和の規模を80兆円から100兆円に拡大するのはひとつの手段であろうが、マイナス金利導入の効果の方が大きいだろう。現段階で新たな政策手段(マイナス金利)を採用すれば、黒田総裁の成長戦略に対する信任は回復されると考える。1月に名目GDP目標を達成するのは難しいだろうが、いずれ達成できると考える。

 

 


この記事に関連する重要なリスク

海外投資には、通貨変動、政治あるいは経済情勢の不確実性に因る損失リスクなどの特殊なリスク要因があります。通貨に対する投資には、信用リスクおよび金利変動などのさらなる特殊要因もあります。



前のブログ 次のブログ