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2016年:日本の10サプライズ
2015年12月14日
イェスパー・コール , ウィズダムツリー・ジャパン CEO


エコノミストやストラテジストが2016年の予測と基本シナリオを発表する時期が来た。定量予測は確率モデル、定性シナリオは経験と常識に基づくものである。いずれの手法にしても、アウトライヤーやサプライズの入り込む余地はほとんどない。

 

「2016年:日本の10サプライズ」はこの点に対処することを目的としており、日本市場投資戦略の転換点と考える「コンセンサスとは違う」シナリオを紹介する。シナリオの確率は市場の基本想定から1~2標準偏差ほど乖離しているが、すぐには実現しないとしても遠大な目標を達成する動きが日本市場の大きな変革をもたらすと考える。想定外のことを警戒するように促すのが本稿の目的である。

 

2016年の繁栄を祈って。

 

1) 名目GDP成長率4%

日本経済の高成長は誰も期待していない。GDPを現在の500兆円から600兆円に押し上げるという安倍首相が掲げる目標が近い将来実現するとみるのは少数派である。安倍首相は年率3%前後の名目GDP成長率を目指しているが、2015年末のコンセンサス予想は2016年の成長率はこの半分にも達しないとみている。従って、2016年半ばまでに名目GDP成長率が4%に達すればまさにサプライズである。

 

実現性:この可能性を否定しない。追加財政出動、設備投資の急回復、潜在的な個人消費を考えると、2016年前半には日本経済が回復すると予想される。たしかに、2015年には労働市場のひっ迫と企業のキャッシュバランスはいずれも需要増に寄与しなかった。しかし、緊縮姿勢と多額のキャッシュは購買力を押し上げ、2016年に需要が増加する可能性は高いだろう。

 

株式市場に目を向けると、国内外の投資家が期待していない日本の成長率上昇はポジティブサプライズとなる。しかし、本当のサプライズが予想されるのは国債市場である。10年債利回りが0.5%で推移している状況で、名目GDP成長率4%を達成するのは難しいが、実現すればまさにサプライズである。

 

 

2) 再び経常赤字に

2015年 の日本の貿易収支と経常収支は黒字だった。エネルギー価格の低迷を背景に、原子炉の再稼働が続き、輸出は安定・増加傾向にあり、この流れが今後も続くとコンセンサスは予想しているようだ。円の大幅な下落が予想されることから、国際収支が赤字になるとは考えにくい。

 

実現性:日本の輸出は世界経済の成長、とりわけ米国の自動車販売台数に牽引される。2015年の日本の自動車メーカーのシェア拡大には、米国の自動車サイクルがかなり後期になっていることに加え、大手ドイツメーカーの販売台数の減少も寄与している。この点は一時的なプラス要因となる可能性がある。2016年にはドイツの自動車メーカーが反撃に転じ、ユーロ安がいずれドイツメーカーにとっては価格面で大きなプラスとなるだろう。一方、日本の輸入額は予想以上の上振れ圧力にさらされると思われる。内需が増加に転じれば、ここ10年間にわたる資本財および消費財企業の海外生産はこれまでよりも急速な輸入デマンドプルを喚起するとみられる。日本企業の積極的な海外進出は輸入弾力性を押し上げ、それにより内需回復を背景に貿易赤字と経常赤字を拡大しているようだ。加えて、2015年のエネルギー価格と商品価格の低下が薄れ、交易条件の反転が予想される。

 

貿易赤字あるいは経常赤字に陥る可能性が再び出てくれば、日銀による追加緩和の有無にかかわらず円安が進む可能性がある。

 

 

3) 金融機関統合の流れ

日本の金融機関は今までとはまったく違うビジネスモデルの構築を迫られており、あらゆる分野でその必要性が高まっている。株式持ち合いの解消は長年にわたるメインバンクとの関係に直接的な影響を及ぼす。地方では人口減少によって地銀などは今後の事業発展が難しくなっている。民営企業となった日本郵政との競争は激化しよう。マクロ経済面では、デフレからインフレへの移行を背景に、銀行を通した間接金融から直接金融への流れが加速するとみられる。銀行、証券会社、保険会社が多すぎるとする見方は多い。2016年に地銀に限らず、メガバンク、大手投資銀行、資産運用会社や保険会社を含めた統合が始まればまさにサプライズである。

 

実現性: 遅かれ早かれ統合の流れが始まるとみているが、ネックのひとつはユニバーサルバンクおよび統合金融サービス機関に関する今後のグローバル規制の枠組みが不透明な点と考える。ただ、不透明性がすぐに解決しないとしても、地銀間の統合の動きは加速するとみられ、また、メガバンクが地銀を買収して営業網を広げても不思議ではないとみている。

 

あくまでも個人的な見解だが、金融機関の統合の流れが加速すれば2016年に最良のパフォーマンスを達成するのは金融セクターであろう。

 

 

4) 「正義のハッカー」がサイバーテロを阻止

サイバー戦争は現実の問題で、企業、個人、公的ネットワークに対するサイバー攻撃対策はリスク・マネジャーや指導者などが直面している最大の「既知の未知」である。これまで、日本はサイバー戦争の阻止と対策については出遅れている感があったが、2015年には官民ともにこの問題に対処する姿勢を強化した。正義のサイバーハッカーがサイバーテラーのキーコードを見破り、攻撃を予測して防ぐ早期警戒システムを構築できればサプライズである。

 

実現性:日本のロボット工学の卓越性は多くのエンジニアや投資家が認めているが、ソフトウェア開発や正義のハッカーに対して世界的な評価を得ることが求められている。この面で日本が画期的な進歩を遂げればまさにサプライズである。日本の若者の間でソフトウェアやIT関連のキャリアを追求する動きが加速することはまず間違いないだろう。

 

 

5) 安倍首相が衆参ダブル選挙に踏み切り大勝

2016年7月に参院選が実施され議員定数の半数が改選される。選挙年が決まっている参議院とは異なり、衆院選は首相が適切と考えた時期にほぼ一存で決定できる。安倍首相は2014年末の衆院選で議席の2/3を獲得して大勝利を収めた。来年、首相が衆議院を解散して衆参ダブル選挙に踏み切れば大きなサプライズだが、過去の例に照らすとリスクは大きく、首相自身もダブル選挙に対して消極的である。背景には何があるのだろうか。

 

戦術的にみると、景気回復が進み政権に有利になると選挙の可能性は高くなる。問題は現在45~50%の首相の支持率が60%近辺まで改善するか否かであろう。ここで注目したいのは、2016年5月26~27日にG7伊勢志摩サミットが開催されるため、グローバルリーダーとしての首相に対する評価が国民の間で高まる可能性である。戦略的には、野党陣営の混迷が続き資金面でも問題があることから、首相はダブル選挙に踏み切りたいと考えられる。2017年4月に予定されている消費税増税の前に選挙を行いたいという意図もあるだろう。

 

ダブル選挙はサプライズだが、もし実現すれば市場にとっては追い風となるだろう。「チーム安倍」はダブル選挙での大勝を確信した場合にのみ実施に踏み切ると考えるからである。

 

 

6) 財務省と日銀が国債をゼロクーポン永久債に転換で同意

日銀は海外諸国の中央銀行がこれまで実施したことがないほどの規模で国債を買い上げているが、出口はあるのだろうか。最終的にどうなるのか。向こう数カ月の間にFRBは「量的緩和」を解除するとみられ、日銀は試練の時を迎えるだろう。官僚がこの点を踏まえて、事前対策を提案すればまさにサプライズである。財務省と日銀が日銀保有の国債をゼロクーポン永久債に転換することに同意すれば、財政・金融情勢は安定し市場は出口戦略に懸念する必要がなくなる。

 

可能性:無論、これはほとんど前例のない大胆なステップである。ただ、期待に反してFRBのバランスシートの「正常化」が予想外に大きな金融の混乱を招いた場合、財務省と日銀の現実に即したより協力的な関係が実現する可能性が出てくるとみられる。

 

そうなった場合、債券市場よりも為替市場への影響が大きいと予想され、円安リスクは大幅に高まると考えられる。

 

 

7) 「アベノミクス」がノーベル応用経済学賞を受賞

応用経済学はノーベル賞の対象ではないから、ありえないサプライズである。受賞するのは学者であり実践者ではない。とはいえ、2015年末時点で「アベノミクス」が成功するとみている評論家やストラテジストは少ないが、2016年にこの流れが反転すればサプライズである。アベノミクスはうまく機能しており、他国の経済政策の手本になるとの報道も増えている。来年5月に開催されるG7伊勢志摩サミットがその起爆剤となるだろうか。

 

日本株式市場はこの点を織り込んでおり、「アベノミクス・プレミアム」(PERの上昇)がみられる。

 

実現性:金融、財政、規制などの分野における企業優先の方策や専門家の協調は、世界的にほとんど重視されていない状況が続いている。国内外の投資家は依然として日本のリスク資産をアンダーウエートしているようだ。安倍首相が提唱している民間部門と公的部門のパートナーシップに対する信頼性の高まりを考えれば、アベノミクスは民主主義と資本主義を標榜する先進国のなかで極めて影響力が強く、遠大な成長戦略となるだろう。

 

 

8) 米中の政策協調

米ドルは依然として基軸通貨であり、FRBが利上げを視野に入れていることから、新興国の多くでは金融情勢のひっ迫が予想される。IMFや世界銀行といった予測機関は米国の利上げが世界経済の成長に水を差すリスクをかなり懸念しているが、対応策は見えていない。従って、中国が介入して、大規模な財政拡大策を打ち出せばまさにサプライズである。多くの面で、米国の利上げによる世界経済への打撃に対処するには中国の財政需要拡大が最も信頼できる手段であろう。実現すれば、新興国の輸出品に対する需要が急増するのはほぼ間違いない。

 

実現性:「リーマンショック」危機の際、中国はケインズ主義に基づく刺激策によって世界の需要を押し上げ、危機を引き起こした世界的な景気低迷の脱出に貢献した。現時点で中国が頼りになるかは不透明だが、2015年には中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)が設立された。2016年にはアジア経済の成長を目指すAIIB と協調した具体的なデマンドプル型プロジェクトが始動する可能性が高い。従って、米中間に明らかな政策協調が出てこないとしても、中国主導の政策運営を背景にアジアの新興国を中心に2016/2017年の成長率が上振れする可能性がある。

 

 

9) TPPが米国議会の内紛で頓挫

TPP(環太平洋パートナーシップ協定)合意は日本経済に広範囲かつ深く影響を及ぼす。農産物の関税引き下げ、知的財産の保護、国有企業との不公正な競争など対象領域は多岐にわたる。完全に実施されれば、日本の生産性と成長性の向上を促すだろう。米国議会がTPPの成立を阻めばショックとは言えないまでもサプライズである。日本に対する悪影響に加え、アジア太平洋地域における米国のリーダーシップが致命的なダメージを受ける可能性が懸念される。

 

 

10) オリンピックの陸上短距離でメダルを獲得

2016年にはリオネジャネイロで夏季オリンピックが開催される。日本は優れたアスリートを輩出しているが、トラック・フィールド競技、特に短距離走の成績は思わしくない。しかし変化が出てきている。陸上男子短距離の彗星、サニブラウンがリオでメダルを取ればまさにサプライズである。日本人の母親とガーナ人の父親の間に福岡に生まれた16歳の少年は、今年の世界ユース選手権の200メートルでウサイン・ボルトが長年保持してきた世界記録を破った。

 

実現性:来年のオリンピックでは17歳のサニブラウンの金メダルに対する期待が高まるだろう。だが、これを望むのは時期尚早と考える。2020年の東京オリンピックで、サニブラウンが表彰台の真ん中に立ってもサプライズではない。

 


この記事に関連する重要なリスク

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