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アベノミクス2.0
2015年12月02日
イェスパー・コール , ウィズダムツリー・ジャパン CEO


先週、安倍首相は2016年以降の経済政策の優先項目を新たに発表した。2016年の成長率予測を押し上げるほどのサプライズはなかった。しかしながら、「チーム安倍」が成長戦略に向けて財界リーダーとの信頼できる関係を築いていることが明らかになり、今回の「アベノミクス2.0(新三本の矢)」をめぐる議論は構造的な成長政策が正しい方向に向かっていることを示している。

 

発表内容

具体的な数値は、ここ4~5週間に報道されたものとほぼ同じだった。

  • 閣僚に約3.5兆円(対GDP比0.7%前後)の補正予算案編成を正式に指示
  • 法人税率を現在の32.11%から30%以下に引き下げることを実質的に決定(実施は2016年会計年度)
  • 最低賃金を毎年3%引き上げ、現在の798円から1,000円とする

目先、最低賃金の引き上げと補正予算案は2016年(特に7月に実施される参院選直前まで)の内需に好影響を及ぼすと予想される。とりわけ、補正予算案には低所得年金生活者への1人3万円の給付金を盛り込むことが固まっている。詳細が発表されるのは12月10日前後になるとみられるが、低所得者層は消費性向が高いことから個人消費押し上げ効果は0.25%と当社は試算している。

 

最低賃金引き上げも同様の効果をもたらすだろう。内閣府の推計によると、現在、労働者の5~9%程度は最低賃金近辺で働いており、3%引き上げれば総所得は約0.35%増加することになる。最低賃金近辺で働く人々の消費性向も高いとみられる。

 

 

「日本株式会社」の復活

こうした前向きな成長戦略にも増して重要なのは、「新三本の矢」の優先項目を推進している積極的で的を絞り込んだ意思決定プロセスである。財界と政府の間には長年にわたり不信感と非協力的な関係が続いてきたが、先週の政策発表は政財界が協力する「日本株式会社」の復活を示唆している。発表された具体的な方針は以下の通り。

  • 財界を代表する経団連は、設備投資の増額と基本給引上げに同意。具体的には、向こう2年間は年間約7%のペースで設備投資を増やし71.7兆円から81.7兆円に拡大する。従業員の基本給を今年度2%強引き上げる。

その代り、経団連は安倍首相から「九つの政策対応」に対する同意を得た。

  1. 法人実効税率の早期引き下げ(確定、上記参照)
  2. 新規購入機器に対する固定資産税減税
  3. 規制緩和の推進
  4. 環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の推進と自由貿易の拡大
  5. 低コストで安定したエネルギー供給の確保
  6. 次世代テクノロジーの促進
  7. 研究開発に対する税優遇措置の拡大
  8. 女性、若年層、高齢者、外国人の労働参加の推進
  9. 規制緩和による労働市場の流動性向上

外国人も含め、労働市場へのより積極的な参加を大手企業が検討している点は重要である。言い換えれば、これまでタブーとされてきた移民受け入れに関する議論がゆっくりとではあるが着実に進んでいる。今では、政府も企業も労働市場の逼迫を十分に認識しており、現実的な方策を取り入れる方向に向かっていると我々は見ている。

ただ、成長率上昇に向けて日本が外国人労働者の受け入れに踏み切るか否かによって「アベノミクス」の進展を評価する姿勢の海外投資家に対し、国内の関心はもっぱら税制改正に向けられている。経団連が政府に求めた「九つの政策対応」のうち三つ(法人実効税率の引き下げ、新規購入機器に対する固定資産税減税、研究開発に対する税優遇措置の拡大)は税制改正に関する事項である。

 

税法の変更は常に複雑な作業であり、念入りに検討する必要がある。来年度予算案をめぐる議論が激しくなる向こう3~4週間で詳細が徐々に明らかになってくるだろう。現時点では、法人税率の30%以下への引き下げ、ならびに税制改正によって企業の設備投資と研究開発を促す方針が注目されており、経団連は政府が自分たちの要請を受け入れれば設備投資を来年度から7%強拡大すると確約した。今年、資本財メーカーの業績は失望を誘う内容になりそうだが、新規取得の機械装置に対する税減免措置が実施されれば好転に向かう可能性があろう。

 

 

日銀の動向は?

先週の官民対話では日銀については直接言及されなかったが、家計所得と設備投資に対する財政出動が明らかになりつつあることから、追加金融緩和は先送りになる可能性が高いだろう。追加緩和のタイミング決めるもうひとつの要因は、今月FRBが利上げに踏み切るか否かである。黒田総裁の国際金融市場における豊富な経験と人脈を考えると、日銀が「様子見」の姿勢を選んでも不思議ではない。すなわち、FRBの利上げによって日米金利差が拡大すればキャリートレードが再開し、円安ドル高を招くため日本にとっては願ってもない状況となる。

 

 

日銀は企業と同じく「総動員体制」に不可欠

日銀が追加緩和に踏み切るとの当社見解に変更はなく、タイミングは年内ではなく2016年3~5月になると予想している。物価上昇率のみならず、これにかかわる当事者も重要である。安倍首相は政治経済のあらゆる分野(企業リーダー、財政の専門家、金融政策の専門家、規制当局など)を総動員すると考えている。

 

安倍首相が目標とする名目GDP600兆円を日銀が金融政策に盛り込むというのが当社見解の根拠である。具体的には、2016年にETF(上場投資信託)の買い入れ額を3兆円から6兆円に増額、財投債や地方債を含めた債券の購入、民間にリスク資産への投資を促すためにマイナス金利を導入する可能性などである。

 

遅くとも2016年半ばまでには金融政策の全貌、あるいは一部が明らかになると思われる。

 

 


この記事に関連する重要なリスク

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