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日本と中国の関係:重要性は?
2015年09月15日
イェスパー・コール , ウィズダムツリー・ジャパン CEO


エコノミストの立場から見ると、日本と中国は夢のような取り合わせである。日本は資本が豊富だが労働力が足りず、一方、中国は本来的に豊かな資源に恵まれている。両者を合わせれば成長の力強い原動力となり、このうえもなく理想的な状況と言えよう。

 

残念ながら投資家にとっては、日本と中国の関係ははるかに複雑である。たしかに、エコノミストが言うように中国の市場開放と近代化は高い経済成長を実現してきた。しかし、日本の資本ストックと技術に対する需要を中国が押し上げてきたとすれば、中国経済が減速している現状は日本企業にとって壊滅的な影響を及ぼしかねない。さらに重要な点として、高成長がもたらした利益は両国が持つ資源の質にほぼ応じて配分されていることを見落としてはならない。日本の資本利益率が上昇した一方、中国の雇用と労働所得は前例がないほどの水準に達した(ただし、中国国内の収益性はそうではない)。ここに来て、成長ダイナミクスが反転すれば、まったく逆の構図になるだろう。すなわち、中国では失業率が上昇し、日本は資本利益率の低下に苦しむことになる。これは投資家にとって最悪のシナリオであり、こうしたトップダウン的見方に基づく警戒感が「日本は危ない」というリスクオフ姿勢の背景にあると思われる。

 

 

日本と中国の関係:一般的な認識と実態

幸い、現在の日本と中国の関係は上述した「重大な懸念」にほぼ反した状況にある。

 

経済産業省が毎年発表している包括的なデータ(海外事業活動調査)によると、ここ5年間で日本の製造業利益に占める中国の重要性は実際には低下している。2009年3月期~2014年3月期に日本の製造業の利益は9.7兆円から1.63倍の25.5兆円に急増したが、増加分に対する中国の寄与はわずか9.1%(1.7兆円)にとどまった。ちなみにこの間の米国の寄与はこれを上回る12%だった。日本の利益を実際に押し上げたのは国内売上高で、収益全体の上昇分の59.5%を占めた。日本の内需は一般的に思われているより重要なのである。

 

 

2014年3月期の製造業利益に占める中国関連の比率は12.3%

もう少し詳しく言うと、日本の総利益に占める中国のシェアは2009年3月期の17.6%から2014年3月期には12.3%に低下している。重要な点として、日本の輸出と中国にある現地工場の寄与に注目したい。中国にある日本企業の工場の利益寄与は2009年3月期の15.2%から2014年3月期には8%へと約1/3下落したが、輸出の寄与は2.4%から4.3%に上昇した。

 

 

2つのポイント

まず、日本経済に占める中国の重要性の低下は中国事業の収益性が悪化していることが主な原因と思われる。

 

次に、中国向け輸出の重要性は高まっているものの、中国依存度は比較的小さい(総利益に占める比率は5%以下)。

 

 

中国関連の利益が40%下落しても、日本の総利益は約5%の低下にとどまる

現実的には、以下の基本シナリオが考えられる。中国関連の利益が40%縮小しても、日本の総利益は約5%の低下にとどまる。現時点でのコンセンサス予想(TOPIX採用企業に対するブルームバーグ予想)は9%の増益だが、この基本シナリオであっても十分なクッションとなる余地があるとみる。

 

 

データが示すクッション

当社の分析はかなり意識的に上振れ余地を残しているが、これは収益データが現時点での営業利益に基づいており、留保利益は考慮していないからである。また、輸出と現地生産に関しては自動車とトラック、通信機器メーカーの比重が非常に大きい。自動車とトラックは海外生産の約44%、通信機器は約30%を占めるが、全業界で見ると海外生産の比率は平均22.9%にすぎない。当社は中国への依存度を意識的に高くしてクッションとした。これは、中国経済の減速が明らかに世界的な収益性低下をもたらす可能性を考慮したからである。

 

 

中国よりも米国が重要

では、日本経済はどの程度米国に依存しているのだろうか。上述した分析によれば、日本企業の利益の18%は米国に依存している(内訳は輸出が4.6%、現地生産が13.4%)。日本企業の利益に対する寄与度は、中国に比べて米国が約1.5倍とはるかに高い点に留意したい。

 

興味深いことに、日本企業の総利益に占める米国のシェアも過去5年間に27.9%から18%に低下している。中国関連と同じく、輸出の寄与度は2.1%から4.3%に上昇したが、現地事業の寄与度は25.8%から13.4%に低下した。これは、円安の影響と思われる。輸出企業の場合、円安になると円換算の売上高が拡大するが、現地の円建て投入コストは変わらないため、収益性はすぐに上昇する。しかし、現地工場ではコストと売上高の両方が増加するため、利益率に変化はない。人民元は実質的にドルと連動しているため、この構図は米国と中国の双方に当てはまる。

 

 

問題なのは国内事業の利益率

中国経済の減速が日本企業の利益に打撃を与えると危惧するのは当然だが、これに目を奪われて日本の国内市場が生み出している膨大な利益を無視すべきではないだろう。2009年3月期から2014年3月期までの5年間で日本企業の総利益は9.7兆円から25.5兆円に増加した。増益への寄与は輸出が30.2%、現地生産が10.3%、これに対して国内売上高の拡大は59.5%にのぼる。背景には国内売上高の5%増加(輸出は7%増) があり、固定費ギアリングの重要性-国内売上高の好転によるスリングショット効果が輸出の安定的な伸びよりも影響が大きいことを示している。


この記事に関連する重要なリスク

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