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アジアの通貨戦争?
2015年08月14日
イェスパー・コール , ウィズダムツリー・ジャパン CEO


人民元の切り下げがアジアの通貨切り下げ戦争を引き起こすとは考えていない。実体経済の状況がきっかけだったとはいえ、人民元切り下げが今後も続く可能性は低いだろう。中国政府の最優先目標のひとつが、アジアのなかで人民元を信頼できる準備通貨にすることだと考えるからである。そのためには、通貨切り下げによる「近隣窮乏化策」ではなく、人民元の信頼性を培っていくことが必要であろう。

 

市場は当局を信用しているか?

 

今回の人民元切り下げは中長期的には有効と思われるが、世界資本市場は中国当局の短期的な解決策を望んでいるだろう。ここ1年をみると中国からの資本流出が続き、準備通貨の着実な減少は人民元/ドル相場の安定維持に向けた中国人民銀行によるドル売りを示唆している。人民元切り下げは市場と仲値のギャップを縮小するとみられるが、向こう数週間にわたって為替バンドの下限近くで取引されれば、仲値のダウンサイドリスクは大幅に増大する。

 

問題なのは、人民元切り下げが本当に資本流出の減少に歯止めをかけるかという点だが、残念ながら、これは正反対の結果を招きかねない。家計部門や企業部門が経済政策の不透明性が高まったと考えれば資本逃避は加速する恐れがある。同様に、海外投資家は中国への投資を縮小しかねない(そうなると、中国政府の意向に反し人民元の需要は減少する)。

米国と中国の金融政策の違いが明らかになってきていることも圧力を強めている。FRBが利上げに転じるタイミングを見据える一方、中国の金融当局は金融緩和のさらなる策を模索している。

 

現状: 中国当局と国際資本市場の投資家の間の緊張は今後も高水準で推移するとみられる。したがって、日本も含めたアジア諸国のリスクプレミアムは政権が支配力を強め、資本市場に対する信頼を取り戻すまでは上昇すると思われる。為替市場への介入(人民元を買いドルを売る)によって当面はうまくいくだろう。ファンダメンタルズ面から見ると、そのためには中国経済の目に見える成長あるいは思い切ったリフレーション政策(資金を海外ではなく国内に投資)が必要と思われる。

 

中国はアジアのドイツであって、フランスではない

 

中国がアジアでの通貨戦争を望まないひとつの大きな理由があると考えるが、これは経済的というより政治的な側面が強い。中国が中長期的に人民元をアジアの準備通貨にすることを目指していることは明らかである。もしそうであれば、1970年代と1980年代のドイツマルクのように、人民元を強く安定した通貨にする必要がある。通貨切り下げに走ることは、アジアと世界における中国の地位と信用性にとって極めて不利に働くと考える。

 

むろん、政策当局の意向は実体経済と照らして検証する必要がある。景気減速により中国の失業率が上昇に転じれば、当面の景気刺激策を取らざるをえない。今のところ、失業率は4%前後で極めて安定しており、データを信用すれば、雇用創出が中国政府の望む水準を下回っている様子はない。雇用統計の変化は大いに警戒する必要がある。中国の失業率の上昇は他のアジア諸国での通貨切り下げを促す可能性が大きいからである。

 

景気の調整と構造面の目標

 

とはいえ、今週は人民元のバンド拡大と国内経済の実情に即した動きが明らかになった。しかし、政策の優先順位について基本的な変更はなく、アジアで安定した強い準備通貨としての地位を獲得する意図は健在である。

 


この記事に関連する重要なリスク

海外投資には、通貨変動、政治あるいは経済情勢の不確実性に因る損失リスクなどの特殊なリスク要因があります。通貨に対する投資には、信用リスクおよび金利変動などのさらなる特殊要因もあります。